相続コラム

2019.08.21

遺留分とは

遺留分の意義と性質

遺留分とは、一定の相続人が相続について法律上取得することを保証されている相続財産に対する一定の割合のことです。
これは、故人の遺志によっても奪われることのない相続人固有の権利であり、最低限の取り分ともいうべきものです。

遺留分を有するのは、兄弟姉妹以外の相続人、すなわち、子(あるいはその代襲相続人)・直系尊属・配偶者です。

なお、遺留分は故人が亡くなったあとであれば自由に放棄できますが、生前に放棄するには家庭裁判所の許可が必要となります。

遺留分の範囲

遺留分の割合は、相続財産全体について、相続人が直系尊属のみであるときはその3分の1、それ以外の場合は2分の1です。

遺留分の額の算定

まず、遺留分を算定するための財産の価額を計算する必要があります。
故人が相続開始時点で有していた財産+贈与財産-債務の全額を計算し、これを「遺留分を算定するための財産の価額」とします。
加算される贈与財産の内容は、次のとおりです。

1 相続開始の一年前にされた贈与
2 当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってされた贈与(不相当な対価をもってした有償行為を含む)
3 相続人が婚姻・養子縁組のため、もしくは生計の資本として受けた、相続開始から10年以内にされた贈与

債務としては、故人の個人的な債務の他、滞納税金も含まれます。

このようにして計算された金額に、それぞれの相続人の法定相続分×遺留分割合を乗じたものが、その相続人の有する遺留分となります。なお、遺留分侵害額は、遺留分権利者が個人の財産から遺留分に相当する財産を受け取れなかった場合の不足分、ということですから、生前贈与を受けているとか、遺産分割で取得した財産があるような場合は、遺留分侵害額を算定するにあたって遺留分の額からこれらの取得額を差し引いて計算します。同様に、遺留分請求者が相続する債務がある場合は、その負担する債務の額を加算して計算します。

遺留分侵害額請求権

相続人である遺留分権利者が受けた現実の相続財産額が、上で計算した遺留分の額に足りない場合、遺留分の侵害があることになります。
遺留分を侵害された遺留分権利者は、自己の遺留分を保全するのに必要な限度において、その侵害額に相当する金銭の支払いを、遺留分侵害者に請求することができます。
これを遺留分侵害額請求といいます。

請求の方法・順序

請求は相手方に対する意思表示のみで足ります。
相手方が侵害額の支払いに応じない場合は、裁判を提起して支払いを請求することになります。

侵害額請求の対象となる遺贈と贈与が複数ある場合は、まず遺贈から請求し、それで不足の場合に贈与について請求します。
遺贈が複数あるときは、原則として各遺贈の目的の価額の割合に応じて請求を行います。
贈与が複数あるときは、あとに行われた贈与から先に請求していきます。

請求の効果

侵害された取り分に相当する金銭の請求ができます。

遺留分権利者から請求を受けた受遺者・受贈者・特定財産承継遺言により財産を承継しまたは相続分の指定を受けた相続人が直ちに金銭を支払うことができない場合は、裁判所に、金銭債務の全部または一部の支払いについて相当の期限を許与してもらうよう裁判を行うことができます。

侵害額請求権の消滅

遺留分侵害額請求権は、相続放棄、侵害額請求権自体の放棄等によって消滅しますが、これ以外に短期消滅時効にかかります。

つまり、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知ったときから1年間これを行使しなかったときは、時効によって消滅してしまいます。
また、これらの事情を知らなくても、相続開始から10年を経過すれば、除斥期間によってやはり権利は消滅します。

なお、この時効は意思表示についての時効なので、請求の意思表示を時間内にしておけば、その後の金銭支払請求が期間の経過後になっても問題はありません。
ただし、侵害額請求権も、通常の債権と同様に、成立から10年、債権法改正後は5年で消滅時効にかかります。